■精米・蒸米(むしまい)■
酒造りは、原料となる玄米を精米し、蒸すことから始まります。蒸し米は、麹造り、酒母、もろみの仕込みに使われます。
酒造りには、大きくて柔らかい米が向いています。お酒にする米は、 25%~30%、吟醸造りの場合などは 50 %も精白し、外側に多く含まれる無機成分や脂肪、蛋白質などを取り除きます。玄米の精米が済むと、翌朝、まだ暗いうちに蒸米にかかります。この蒸し器のことを「甑(こしき)」と言います。蒸し加減は、摂氏 100 ℃の蒸米を素早く掴み、手のひらでひねって、餅ができるくらい柔らかくなっているかを見て確認します。これを「ひねり餅」と言います。
■麹(こうじ)■
酒造りの第一段階、麹造りをします。蒸し米に黄麹菌を植えて麹を造ります。麹は酒母、もろみにいれて米のデンプンを糖化していく役割を果たします。
まず、冷ました蒸米を麹室に入れます。2~3時間たったら広げ、麹菌の胞子をふりかけます。「床もみ」といって、蒸し米と麹菌の胞子をまぜあわせます。翌朝、これを切り返します。約2時間後に、麹蓋に一定量ずつ盛ります。「仲仕事」といって、2~3時間ごとに手入れや積み替えなどを、幾度も行います。麹室は、麹菌の生育に必要な温度と湿度を保持できるように作られています。約40時間後に、麹が出来上がります。
■酒母(もと)■
酒母(もと)酒造りの第二段階は、酒母造りです。酒母は蒸し米、水、麹に酵母を加えたもので、もろみの発酵を促す酵母を大量に培養したものです。日本酒造りには、良い酵母が大量に必要ですから、文字どおり「酒の母」といえます。
■段仕込み■
ここで日本酒造りの特徴である三段階に分けて仕込みをする段仕込みが行われます。一日目は初添え。翌日の仕込みはお休み。酵母はゆっくりと増えていきますが、これを踊りといいます。三日目に二回目の仕込み(仲添え)をし、四日目に三回目の仕込み(留添え)をして仕込みは完了します。段仕込みは、雑菌の繁殖を抑えつつ酵母の増殖を促し、もろみの温度管理をやりやすくするための独得の方法です。
■もろみ(造り)■
もろみ(造り)いよいよ、この酒母に麹、蒸し米、水を加えてもろみを仕込みます。酒母に、麹と蒸米と水を加えて、発酵させたものがもろみですが、何度かに分けて、酵母の増殖を待ちながら、増やしていきます。 このもろみがやがて原酒となります。
回数は江戸時代から、三段仕込みでほぼ定着しています。仕込みが終わってから、数日たちますと、もろみの表面が、軽い泡で覆われます。日本酒は並行複発酵といって、麹によって米が糖になる発酵と、その糖が酵母でアルコール化される発酵が、同時に進行します。やがて、泡がひいていき、20~25日ぐらいたつと、発酵が完了します。
■新酒誕生■
新酒誕生二十日ほどかけて発酵を終えたもろみは、圧搾機で搾られ、酒と酒粕に分けられます。
搾りたての新酒は、ろ過、加熱(火入れ)され、そして貯蔵されます。また製成後、一切加熱処理をしないお酒を生酒といい、製成後、加熱処理をしないで貯蔵し、出荷の際に加熱処理するお酒を生貯蔵酒といいます。精米から、並行複発酵、段仕込みというとても複雑な工程を経て、約六十日間をかけて、日本酒は誕生します。
完成したもろみは、酒袋に入れ、この酒舟で絞って、酒と粕とに分離します。これを「上槽(じょうそう)」といいます。しぼりたての酒は少し濁っていますが、これを他の桶に移して、1週間ほどおいて、沈殿をさせます。次に、火入れといって、酒を60~65度に加熱して、酒を腐敗させる「火落ち菌」を殺します。これによって、酒の風味の調和をはかり、保存性を高めます。低温殺菌法ですが、これが、近代蔵の火入れです。アルコール度数も調整火入れの終わった酒は、貯蔵タンクの中で、半年から1年寝かされ、熟成していきます。それぞれのタンクの味は微妙に違いますので、十分に熟成した原酒の味を確かめます。
いくつもの貯蔵タンクの中から相性のいいもの同士をブレンドして、それぞれの酒蔵の銘柄の味に作り上げます。同時に、アルコール度数も調整します。