1957年に発刊され、ベストセラーとなった小説『暖簾』。
モデルとなったのは小倉屋山本であり、著者は三代目山本利助の実妹、山崎豊子でした。
昆布を通して描かれていたのは、一刻を惜しんで働き、懸命に暖簾を守り続けた、大阪商人の生き様そのもの。かつて日本の商人は大阪が代表し、大阪商人は船場が代表したと言われていました。
そのため、船場商人は日本を代表する商人としての誇りを持っていたと聞きます。商人ですから、一から十までソロバンづく。
しかし暖簾を守るためには、採算を度外視してでも信義を貫くという心意気がありました。代表商品『えびすめ』は、そんな商人気質を持った先代の意地が生みだした逸品です。
このように暖簾には、先代より受け継がれてきた伝統が染み込んでいます。そして、暖簾は伝統として守るものではなく、今の暖簾をどう創り続けていくかが重要であると思うのです。
小倉屋山本の味は、熟練した職人の手作業によってのみ生み出されます。これは私たちにとっての財産であり、絶対に守るべきもの。
私たちは職人であると共に商人です。
時代に応じて、お客さんに喜んで買ってもらえる商売をしなければなりません。暖簾にあぐらをかいて飽きられてしまってはおしまい。
文字通り、商(あきな)いをし続けること。いつまでもくぐっていただける暖簾を掲げ続けること。それこそが、高級真昆布を大阪庶民の味にしてきた小倉屋山本の暖簾です。