優しい優しい味わい。“鳳凰”の奥行きのある味わいを表現する、それはまさに蔵人と自然との戦い。山田錦を半分以下、40%になるまで磨くには、精米だけで65~70時間を要します。その後も蒸し、製麹、酒母仕込みと蔵人の神経を擦り減らす作業の連続。そしてもろみの仕込みには長いもので50日近くをかけ、ゆっくりゆっくりと醗酵させていくのです。
やや甘味があり、酸味が爽やかさを感じさせてくれる味わいの鳳凰は、そうやって仕込んだお酒を原酒のまま瓶詰め・熱処理・貯蔵されてやっと世に出ることのできたお酒です。よ~く冷やすもよし、ロックもよし。優しい味わいを、ぜひご体感ください。
<蔵人のこだわり>
香りの高い純米大吟醸を作るのは非常に難しい。理由は、酒の香りの成分カプロン酸エチルや、酢酸イソアミルの性質の為。これらの香気成分はアルコールに溶けやすいという性質を持っているので、しぼる直前に醸造用アルコールを加えて搾るいわゆるアル添酒は、アルコールに香りが溶け出し、香りの高い酒ができあがります。しかし、これをアル添しない純米でやるとなかなか難しいのです。
もう一つの香りを出すポイントが麹造りです。「もろぶた」と呼ばれる小さな蓋に一升つづ麹を盛り、丁寧に造っていきます。麹は蒸米にもやしという麹菌をふりかけ、48時間かけて造るのですが、もやしをつけてから24時間後には、麹菌が活発に菌糸を伸ばし始め、どんどん熱が上がっていきます。これをコントロールするために夜も1~2時間置きに起きて麹をチェックし、上下を入れ替える「積み替え」という作業をします。こうした人の手による細かい管理のおかげで、「突きハゼ」と呼ばれる米の中まで突いた様に菌糸の伸びた、大吟醸に適した麹を造っているのです。