全国新酒鑑評会。それは、年に一度だけ行われる、新酒の全国大会。この会に出品するお酒はその酒蔵が持つ技術の全てを集結し仕込まれ、また出品時にベストコンディションとなるよう厳正に管理されます。“しずく”は、その新酒鑑評会に出品するお酒と同じ方法で仕込まれ、なおかつアルコール添加を行わず完成させた純米大吟醸です。
一年で一番寒い時期を仕込み期間とするのは、低い気温の中で醗酵をよりゆっくりと進めるため。それにより、果実にも似た芳醇な吟醸香を持つお酒になるのです。そして、搾りは圧力を一切かけずに行われる「袋吊り」という手法を用います。搾り袋にもろみを汲み入れ、それを吊るして自然と滴り落ちる雫だけを集めます。圧力をかけないため、もろみに含まれる雑味などはまったくお酒に現れず、どこまでもさらりとした舌触り。そのかわり、時間をかけて滴り落ちる雫は余韻奥深く、芯の強さを感じる味わいです。
<蔵人のこだわり>
米の磨きからしぼりに至るまで、すべての酒造りの工程においてこれでもか、というほど手を掛けて醸された酒。御前酒の技の集結された酒といっても過言ではないでしょう。
その中でも特筆すべきは、袋吊りという非常に贅沢なしぼりの技です。酒袋というしずくしぼり専用の袋にしぼる直前の酒(もろみ)を少しづつ入れて、自然に滴り落ちる酒のしずくのみを集めた贅沢この上ないお酒です。同じ量の米から作る酒と比べるとわずかな酒しか取れません。
しぼる前までの手間隙のことを考えると失敗はできません。蔵の中に年で一番といってもよいほどの緊張が漂い、蔵人が最も輝く瞬間でもあります。